今回は帝王切開のお話です。

犬の日があるくらいで、犬は安産だ、と考えておられる方が多いのですが、
帝王切開をせざるを得ないケースは少なくありません。
帝王切開とは、おなかを切り、子宮をお腹の外に引っ張りだし、子宮を少しだけ切り
赤ちゃんを取り出す手術のことで、何らかの原因で正常に分娩できないときに、
(赤ちゃんが、おなかにある子宮のなかから出てこれないときに)
行う手術です。

手術の技術に関する難易度としてはそれほど難しいものではありません。
ただし、母犬、お腹の中の赤ちゃんへの麻酔による負担の問題、お金の問題
(深夜、早朝に手術をすることがあり、10万円を超えることもあります)等
いろいろありますが、なんといっても難しいのは帝王切開に踏み切るのか、
帝王切開をしないで正常な分娩をまだ待つのか、という判断です。
飼い主さんとしてはもちろん、できるだけ自然分娩で、と考えておられる方が
多いのですが、帝王切開の判断が遅すぎると、おなかのなかの赤ちゃんが
死んだり、脳に後遺症を伴ったり、母犬が亡くなることもあります。

分娩に備えて赤ちゃんが何匹いるかを知っておくことはすごく大事です。
エコーでは赤ちゃんの数が多い時に匹数を正確に数えることができないため、
妊娠55日目ごろにX線を撮影し、何匹いるのか確認します。
犬の妊娠期間、交配してから分娩までの日数は58日から65日と約7日間の
幅があります。
分娩が近づくと、母犬は落ち着きがなくなり、地面を掘るような行動をしたり
(巣づくり行動)、外陰部が充血し、呼吸が浅く、早くなります。
食欲はなくなることが多いのですが、分娩直前まで食欲がある犬もいます。
行動と同様に体温測定でも分娩の予測がある程度できます。
当院では分娩予定日の5日ほど前から1日3回以上測定してもらっています。
体温が37.5度以下になると、24時間以内に分娩することが多いです。
その後36.5度から37度まで下がり、最低体温から再び体温が上昇し始めると
半日以内に分娩することが多いです。
おっぱいは分娩前からでることもありますが、個体差があるので、おっぱいでは
分娩の予測はできにくいです。

帝王切開に踏み切るかどうかの判断として以下のようなことが挙げられます。

1. 上記のような分娩の兆候があり、体温が低下しているのに、
24時間以上たっても分娩しないとき。
2. 破水により透明な液体が陰部からでたのに、1、2時間たっても
分娩されないとき。
3. 強い陣痛が30分以上続いているのに分娩しないとき。
4. 赤ちゃんの体の一部が出てきている場合で、陣痛があるのに
それ以上分娩が進まないとき。無理に引っ張ってはいけません。
5. 第1子が分娩されていない場合で、濃い緑色の液体が外陰部から
出てきているのに、赤ちゃんが出てこないとき(このケースは結構、緊急です)
6. エコー検査で赤ちゃんの心拍数が低下しているとき。通常の心拍数は
1分間に200回以上です。
7. 陣痛がなくなり、母犬の元気が急激になくなったとき。
8. 陣痛促進剤を注射したのに20分ほど待っても分娩されないとき。
陣痛促進剤の注射は必ずするわけではありません。
陣痛促進剤を使ってはいけないケースもあります。
9. 時間が結構かかって自然分娩で生まれた赤ちゃんが死んでいたり
最初は生きていたがすぐに死んでしまう時で、まだおなかの中に
赤ちゃんがいるとき。
10. 前の赤ちゃんが生まれてから、2時間たっても次の赤ちゃん
が生まれてこないとき。

前もって帝王切開を計画できることもあります。犬の種類や、母犬が高齢の時、
(高齢出産は危険です)、赤ちゃんが1、2匹でお腹の中で大きく
成長しているとき等です。

帝王切開はいろいろと大変です。いきなり電話で 「帝王切開してください」 と
言われても準備の問題等あり無理です。
(夜間、早朝の場合は札幌夜間動物病院に相談してください、と伝えています)。
犬、猫が妊娠しているのがわかったら、一度受診してください。
こちらも帝王切開等の場合に備えて計画を立てます。
いいおさんができるよう、お手伝いさせていただけらばと思います。
(2015年6月17日)

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