今回はかたタマ、特に猫さんのかたタマについてです。

かたタマ(片タマ)と書きましたが、いろいろな言い方があります。
腹腔内精巣、潜在精巣、停留精巣、陰睾などと表現したり、
かたきん(片きん、片金)などと表現したり…。

要は、金玉が2つとも、タマ袋(陰嚢)におさまっていればいいのですが、
1個しか金タマ(睾丸)がなかったり、1個もない場合もあります。

猫のタマタマをとる手術(去勢手術)は、2つともタマタマがタマ袋にあれば
それほど難しくはありません。
2つのタマタマの間の皮膚をちょこっと切開すれば
簡単にタマタマをとることができます。

ところが、1個しかないとなると、簡単ではなくなります。
まず、残りの1個がどこにあるかを見つけなければなりません。
おなかの中に残っているのか、それとも皮膚の下に触れるのか…。

皮膚の下にある場合は、よくよく触るとわかることもありますが、
脂肪が多い猫さんだとわかりにくいですし、おなかの中に残っているなら
エコーで探せば、たいていの場合、おなかのどこにあるかわかります。
そして手術では、おなかをあけて(皮膚、腹筋を切開して)、
残っているタマを取り出します。
タマタマが2つきちんとタマ袋にある場合に比べて、
手術のレベルがぐっとあがります。
当院ではエコーで見つけたタマの直近の皮膚や腹筋をきることで
できるだけ手術の切開部位が最小限になるようにしています。

先日も他院にて、金タマをとる手術を数年前にされた方が来院されましたが、
金タマが1個しか触れず、その1個しかとってもらえなかったそうです。

もう一つの金タマが、おなかの中に残っている場合、
この金タマが機能すれば、マーキングはするし、おしっこのにおいは
臭いままだし、発情はするし…
なので1個だけ金タマをとる意味は全くありません。
2つ金タマをとってはじめて去勢手術の意味がでてきます。

なのに、他院で1個しか金タマが触れないという理由で
1個しか金タマをとってもらえなかったオス猫さんが当院では
上の猫さん以外に3匹もいました。
いずれの飼い主さんも、猫のおしっこのにおいに
ずいぶんと悩まれておられました。
そのうち2匹は当院にてエコーで残っている金タマをみつけて、
手術でとりました。
いずれの猫さんも、その翌日から、おしっこのにおいが激減し、
夜鳴き等の発情がなくなり、壁にマーキングもしなくなったとのことです。
残りの1匹は高齢のため、手術はしたくないとのことでした。

オス猫のタマタマをとる去勢手術を検討されている方は、
タマタマがちゃんと2つ触れるか、手術前に可能ならば確認しておいてください。
当院では手術予約時に2つタマタマが触れるか必ず確認してますので
飼い主さんがわからなくても、大丈夫です。

(2013年1月20日)

第41話〜はこちら

第40話 血糖値測定が激変

第39話 輸血とSNS

第38話 おもちゃが口に‥

第37話 ダイエット不要

第36話 アロペシアX

第35話 避妊手術の傷

第34話 帝王切開は大変

第33話 動画で撮影

第32話 トキソプラズマ症

第31話 おうちで皮下注射

第30話 心臓病と呼吸数

第29話 犬ときのこ

第28話 抗生剤の連続投与

第27話 猫の歯肉口内炎2

第26話 猫の歯肉口内炎

第25話 歯石除去

第24話 犬も雪道で骨折

第23話 食欲全くなし

第22話 猫のかたタマ

第21話 コレステロール

第1話〜第20話はこちら