最近、妊娠された飼い主さんからトキソプラズマについての質問を受けました。
また別の飼い主さんは、最近マンションに引っ越されたのですが、
そのマンションの管理会社から猫のトキソプラズマ検査を受けるよう指示があり、
検査を受けたいとの問い合わせがありました。
そこで今回はトキソプラズマについてまとめてみました。
とにかく詳しいことが知りたいという方には
http://toxo-cmv.org (先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス
感染症患者会)のホームページを見ていただければと思います。
ここでは、トキソプラズマ症のポイントをまとめてみたいと思います。
トキソプラズマとは、小さな虫、寄生虫です。肉眼では見えません。
ちょっとした良い顕微鏡でないと見えません。
どの臓器にも侵入しますので、どの臓器がおかされるかで症状が異なります。
ただし、犬、猫が感染しても多くの場合、無症状か、発熱など軽微な症状がでても
数日で自然に治ることが多いため、トキソプラズマ症だと診断できないことが
ほとんどのようです。
トキソプラズマはほぼすべての哺乳類、鳥類に感染します。
猫以外の哺乳類、鳥類にトキソプラズマが感染してもトキソプラズマは脳や筋肉で
潜伏したまま一生を終えるので、食べない限り人には害を加えません。
よく、豚肉は生で食べてはダメと聞きますが、トキソプラズマに関しては豚肉も
牛肉も鶏肉も羊肉も、生食ではトキソプラズマに感染するリスクがあります。
そして、猫だけは異なり、猫が「はじめて」トキソプラズマに感染した場合は
虫卵(正確にはオーシストといいますが…)をうんちに排出します。
つまり、猫は他の動物や人への感染源になります。
そして、ここが大事なのですが、猫がはじめてトキソプラズマに感染すると
うんちに虫卵を排出しますが、排出するのは数日から3週間程度のごく短い
期間だけでその後はトキソプラズマに再感染しても虫卵の排出はしません。
猫がトキソプラズマを排出するのは猫の一生の間で数日だけなのです。
なので、猫の血液を検査し、トキソプラズマの抗体を持っていると判明したら、
その猫はもう感染源にはならない すなわち人にはうつらないということになります。
むしろ過去にトキソプラズマに感染したことがなく、血液中にトキソプラズマの抗体が
ない猫のほうが、人にとっては危険で、その猫が今後トキソプラズマに感染すると
人への感染源になりえます。
ある報告によると、日本の猫の5%がトキソプラズマ抗体陽性との報告が
ありますので、95%の猫は今後トキソプラズマの感染源になりえます。
今度は妊婦さん側から考えてみます。
妊婦さんがトキソプラズマ陽性だった場合ですが、
妊婦さんが妊娠前にトキソプラズマに感染し妊娠前に抗体を獲得していたのなら
トキソプラズマ症の心配はいりません。
妊娠中に感染し、抗体陽性になった場合は胎児に
トキソプラズマによる先天障害がでる可能性があります。
妊婦さんがトキソプラズマ陰性の場合は今後トキソプラズマ症に
感染する可能性があります。
よって、6通りのパターンが存在します。
同居猫が抗体陰性か陽性か(2通り)
妊婦さんが抗体陰性か、妊娠前に陽性か、妊娠中に陽性になったか(3通り)で
2×3通り=6通りです。
そのうち、妊婦さんが妊娠前から陽性なら、同居猫は陰性だろうが、
陽性であろうが問題なし。
妊婦さんが妊娠中に陽性になった場合は胎児にトキソプラズマによる
先天障害がでる可能性がありますが、
妊婦さんが抗体をすでに獲得したので、同居猫が抗体陽性であろうが
陰性であろうが今以上に胎児に悪影響を及ぼすとは考えにくい。
妊婦さんが抗体陰性で同居猫が抗体陽性の場合は
同居猫からの感染の可能性はかなり低い。
問題は妊婦さんが抗体陰性で同居猫も抗体陰性の場合です。
妊婦さんが妊娠中に猫がはじめてトキソプラズマに感染すると
この猫がトキソプラズマの感染源になるため、細心の注意が必要です。
最近の調査では妊婦さんの10%がトキソプラズマ抗体陽性とのことです。
猫がうんちに排出したトキソプラズマの虫卵は土の中で長期間生存します。
猫を飼ってる人と飼ってない人との間でトキソプラズマの感染率は
差がないようですが、ガーデニングをしない人に比べると、
ガーデニングをする人は感染率が高いようです。
よって、以下のことに注意いただければと思います。
猫のウンチの処理後は手を洗う。トイレは毎日清潔に(うんちをして24時間以内は
トキソプラズマの虫卵は感染力を持ちません)。猫との過度なスキンシップは避ける。
妊婦さんも猫も生肉、生ハムを食べない。猫を外に出さない。
他の猫との接触を避ける。これを読んで、さらに知りたい方は、
上記ホームページをご覧ください。(2014年10月29日)