抗生剤、抗生物質をずーと飲んでていいの? という話です。
先日、獣医師の勉強会で話題になった内容ですが、私も同意見だったので、
ちょっと書いてみました。
耳がただれて真っ赤になり、臭いもかなりくさく、頭をふり、
前手で耳をかいている犬が、他院から転院されてこられました。
半年も前からこの状況で、以前通っていた病院で抗生剤が処方され、
半年間ずっと同じ抗生剤を服用させていたそうですが、
治らないために当院に転院されました。
そもそも抗生剤、抗生物質が、やっつけたい菌に有効なのであれば、
1週間、長くても2週間も服用したり、塗布したりしているのであれば、
やっつけられるはずです。
もし、1〜2週間もの間、抗生剤を服用しても改善がないなら、
@ その抗生剤は、やっつけたい細菌には有効ではない。
A その抗生剤はその細菌に有効なんだが、届いてほしい場所(今回なら耳)に
抗生剤が届いていない。
B そもそも病気を引き起こしているのは細菌ではなく、ウイルス、かび(真菌)、
寄生虫、アレルギー、自己免疫疾患などが原因である。
と考えるべきです。
@に関しては、抗生剤使用当初はやっつけたい細菌に有効だったかもしれないが、
抗生剤をずーと服用することで細菌が強くなり(耐性を獲得し)、
無効になってしまった可能性もあります。
いずれにせよ、「特別な場合を除き」、2週間も抗生剤を服用して効果がないなら、
その抗生剤をいったんやめるべきだと思います。
今回のわんこには抗生剤の服用をやめてもらい、
2回、耳の中をぬるま湯でしっかりと洗浄したところ耳はすっかりよくなりました。
抗生剤で細菌をやっつけにいくより、物理的に細菌が除去できるなら
もちろん、後者の方がいいかと思います。
(今回は耳を2回洗浄するだけでかなりうまくいきましたが、
コッカーやシーズー等、なかなかうまくいかないことも多々あります…。)
ちなみに、もし、ぬるま湯で耳を洗浄してもよくならなかったら、
抗生剤を変えてみたり、耳の細菌を専門の検査センターに送って、
その細菌がどういう細菌で、どの抗生剤が有効なのかを
調べる検査をする予定でした。
耳だけではなく、他の部位、皮膚や内臓等も含め、抗生剤を1週間、長くて2週間
飲んでも効果がない場合は治療方法を再検討することも必要だと考えています。
(2013年9月7日)