今回の話は、腎不全の話です。以前にも書きましたが(第3回)、
今回は皮下注射にしぼって話をします。 

糖尿病の犬、猫さんの飼い主さまには、インシュリンを
おうちで注射していただいています。
犬、猫さんにインシュリンを毎日、1回か2回、おうちで注射してくださいと
お願いすると、たいていの方は 「 えっ! 」と驚かれますし、
「 注射を打つなんて絶対ムリッ! 」と拒絶されてしまうことが結構あるのですが、
糖尿病 = インシュリンを注射するということをみなさんご存知で
最終的には納得していただき、おうちでインシュリンを注射していただいています。
「 絶対ムリッ! 」 と言われてた方も、数日で 「 何の問題もなくできました 」と
言っていただけるようになります。

腎不全の時、特に状況が悪い時、人工透析ができればなぁ…と常々思いますし、
ごく一部の病院では実施しているようですが…。当院ではできず…。

腎不全でもおしっこが自力で出せるのであれば、
当院では強く背中への皮下注射をおすすめしております。
腎臓は血液中の老廃物を濃縮しておしっことしてからだの外に
老廃物を出していますが、腎不全の時は血液中の老廃物を濃縮する能力が低下し、
水分といっしょに老廃物をおしっことして出すため、薄いおしっこをたくさんします。
なので、脱水してしまいます。
そこで第3話にも書いた薬を使用しつつ、
おうちで、ポカリスエットのような身体の体液に近い組成の液体を結構たくさん、
(〜100ml〜200ml〜くらいなことが多いです)を背中に注射して、
脱水の対処します。腎不全の時は腎臓に、
「老廃物を濃縮しなくてもいいから(=そんなにはがんばらなくていいから)、
薄いおしっこでいいから、いっぱいだして、血液中の老廃物を少なくしよう、
そして、その分長もちしてね 」 というような意味合いで背中に皮下注射をします。
本当は入院させて血管の中にプラスチックの針を入れ、
血管の中に点滴をずっと流し続けるのがいいのでしょうが、
犬、猫さんにそのようなことをすると、すごくストレスをかけるので、
入院を最低限だけにし、なるべく早い段階で皮下注射に切り替えます。
皮下注射に切り替えると、通院で対処できるようになり、入院よりかはストレスを
減らすことができると思いますが、それでもまだストレスがかかると思います。
もし、おうちで背中に皮下注射できると、犬、猫さんも病院に来る回数がかなり減り、
飼い主さんも時間の余裕があるときに皮下注射ができ、
また、1日何回でも皮下注射することができ
(一度にたくさん皮下注射するより、少量を数回にわけて皮下注射したほうが
犬、猫さんへの負担がすくなくて良いです)、
来院いただいて私が背中に皮下注射するより、おうちで皮下注射を
していただいたほうが値段も少し安くなり、といいことがたくさんあります。
なので、なんとかおうちで皮下注射をがんばってみませんか?と提案しますが、
糖尿病の時のインシュリンの注射ほどは、すぐに やってみますとは
言っていただけないことが多いです。、
それでも多くの方がトライされて、おうちで皮下注射されてます。
皮下注射をおうちでする場合、当院でははじめに5日間ほど通院いただきます。
そして、その5日間で飼い主さんに背中への皮下注射の練習をしていただき、
問題なくできそうだと私も飼い主さんも感じれば、あとはおうちで
皮下注射をしていただきます。
やってみます と言っていただいた方はほぼみなさん、できるようになります。
無理です、と言われることもあります。
糖尿病の時は、「そこを何とか… 」と強くお願いしますが、
腎不全の場合はもちろん無理強いはしませんが、
そのかわり通院していただくことになります。(頻度は、状況によります)

先日、残念ながら亡くなった腎不全の犬の飼い主さんには、
当院にきてなければもっと早く亡くなっていたかも と言っていただきました。
毎日、1日1、2回皮下注射を数ヶ月頑張っていただきましたが、
その間、数回は来院いただきましたが、その犬に対するストレスは
かなり減らすことができたのではないかと思います。
そんなに難しくありませんので、糖尿の時と同様に、腎不全のように長期に渡って
皮下注射が必要な時、おうちでの皮下注射を検討いただければと思います。
(2014年8月20日)

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第40話 血糖値測定が激変

第39話 輸血とSNS

第38話 おもちゃが口に‥

第37話 ダイエット不要

第36話 アロペシアX

第35話 避妊手術の傷

第34話 帝王切開は大変

第33話 動画で撮影

第32話 トキソプラズマ症

第31話 おうちで皮下注射

第30話 心臓病と呼吸数

第29話 犬ときのこ

第28話 抗生剤の連続投与

第27話 猫の歯肉口内炎2

第26話 猫の歯肉口内炎

第25話 歯石除去

第24話 犬も雪道で骨折

第23話 食欲全くなし

第22話 猫のかたタマ

第21話 コレステロール

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