今回は、猫の腎臓の話です。ここ1週間で腎不全の猫さんが3匹来院されました。
そこで腎不全についてまとめてみました。

腎不全になると腎臓がきちんと働けない、働いていない状況になります。
初期の段階では症状がでないことが多くありますが(実はこれがやっかい)
症状の段階が進むと、 ・水をたくさん飲む(たとえば以前の倍以上)
 ・おしっこの回数が増える、うすいおしっこをするので
  おしっこのにおいが弱くなる
 ・食欲が落ちる  ・吐く、下痢をする  ・貧血  ・脱水
などの症状が出てきます。

水をたくさん飲み、おしっこをたくさんするいわゆる多飲多尿で飼い主さんは
糖尿病ではないかと疑われて来院されるケースもあります。


腎不全をどうやって見つけるか、また段階をどう判断するか
検査についてまとめてみました。

1、血液検査でCre(クレアチニン)の値を測定する。
  Creの値が1.6までを第1段階、2.8までを第2段階、5.0までを第3段階、
  5.0以上を第4段階と判断します。

2、Cre以外に、尿検査が重要になってきます。
  おしっこの濃さ(尿比重)…濃さという言葉は正確ではないかもしれませんが…
  おしっこ中の細胞の種類、バイ菌、結石のもとになる結晶など
  おしっこに血液が混じっているかどうか などいろいろ見ますが、
特に注目するのが、おしっこにたんぱくが漏れ出てないかということです。
腎臓が正常の場合、通常、たんぱくは漏れ出てきませんが、
腎不全になると漏れ出てくることがあります。
おしっこにたんぱくがどれほど漏れ出ているかは、
おしっこのたんぱくの量とクレアチニンの比(UP/C)で判断します。
この比の値も腎不全の治療方法の選択に重要となります。
ただし、おしっこに血液が混じっている場合、
腎臓からたんぱくが漏れ出ているのか、
血液の中のたんぱくを見ているのか判断できないので、
たんぱくの量とクレアチニンの比(CPR)は判断が難しくなります。

3、血圧も重要になってきます。
腎臓には血液をろ過する糸球体と尿細管(ネフロン)がたくさんあります。
正常な糸球体が減少すると、残った糸球体は糸球体の血圧をあげることで、
ダメになった糸球体の分まで働きます。それまでの数倍も働くことで、
みかけの糸球体のろ過量が保たれます。 
糸球体の ろ過量を維持する目的で意図的に高血圧にしているのですが、
逆に高血圧のせいで残っている糸球体やネフロンに負担がかかり、
壊れてしまうという悪循環に陥ってしまいます。
そしてネフロンの残量が2〜3割を切ると、糸球体のろ過量が維持できず、
急激にろ過量が減少してきます。
この段階になるまで血液検査のCreやBUNの値は上昇しません。
最高血圧が150mmHg〜160mmHgを低リスク、
160mmHg〜180mmHgを中リスク、180mmHg以上を高リスクと
分類する方法もあります。
猫さんの血圧測定はなかなか難しいです。病院にくると緊張してしまいますので、
病的に高血圧なのか、緊張して血圧が一時的にあがっているのか判断に
悩むときもありますので、
何回か血圧を測定して判断します。

4、血液の中のリンやカルシウム、カリウムの濃度や血液の酸性度
(代謝性アシドーシスになっていないか?)も治療方法の決定に
必要になることもあります。

腎不全の原因は年齢的に弱っている場合や、腎臓の炎症、
腎臓の腫瘍(リンパ腫など悪性のもの)、先天的異常(生まれつき)、
細菌やウイルス感染など多くの原因があり、原因をはっきりさせるのが
難しい場合もあります。腎臓の大きさや形を判断するのに、
エコー検査やX線検査を実施することもあります。

治療方法
慢性腎不全を完全に治すことはできません。
しかし、早期に病気を発見し適切な治療をはじめることで
病気の進行を遅らせることはできます。
また上で決定した腎不全の段階によっても治療方法は変わってきます。
原因がはっきりするものに関しては、その原因に対する治療を行います。
たとえば、腎臓ががんにおかされている場合、抗がん剤の使用を検討します。
腎不全が進行すると脱水症状になり、水をたくさん飲むので、
常に水を切らさないようにしたり、頻繁にトイレに行くので、
トイレを清潔に保ったりします。
ご飯は、リン、たんぱく、塩分を制限したほうが良いので、
動物病院で扱っている腎臓病用のごはんを
お勧めします。ただ、食べてくれないこともありますので、
相談いただければと思います。
脱水症状が認められれば輸液を行います。
血圧を下げる薬を服用することもあります。
血圧を下げることで残っているのネフロンの負担を軽くします。
また、たんぱくがおしっこの中に漏れ出てくるのを防いだり、
ネフロンが壊れるのを防いで慢性腎不全の進行を遅らせます。
ただし、脱水しているときは脱水を治してから薬を服用するものや、
血圧を定期的に測定しながら、飲み薬の量を決定していくものもあります。
また、薬用の活性炭を飲んで素を吸着させ、うんちとして出す方法もあります。

腎不全は早期に発見して、治療を開始すると進行をおくらせることができます。
進行してからだと治療方法が限られることもあります。
8歳過ぎには、ワクチンの時にでも血液検査と尿検査を最低でも1年に1回、
さらに高齢の場合は半年に1回ほど健康診断を受診することをお勧めします。
来院していただいた猫さんたちが少しでも楽になって
長生きしてくれればと思っています。

第21話以降はこちら

第20話 海外移住

第19話 大型犬の食欲

第18話 また肛門腺の話

第17話 肛門腺の化膿

第16話 犬と猫の便秘

第1話 消毒液

第14話 窓の外

第13話 仔猫とハジラミ

第12話 猫とユリ

第15話 毛玉ケア

第11話 こげ茶色の耳垢

第9話 爪のけずれかた

第6話 自転車での散歩

第8話 雪の日の散歩

第7話 巻き爪

第10話 マダニ予防

第5話 脂肪腫?

第4話 てんかん

第3話 腎不全

第2話 輪ゴムに注意