今回はてんかんの話です。数年前に記事を記載しましたが、
いろいろと変更点もあり、記載しなおします。

まずてんかんの分類について。
いろいろな分類方法があるのですが、ここでは原因別に大きく3つに分類してみます。

1 特発性てんかん
特発性とは「原因がよくわからない、原因が特定できないという意味です。
とは言え、遺伝的な素因が原因のことが多いようです。
この特発性てんかんの場合はMRI、CT、脳脊髄液の検査をしても
原因がわかりません。特発性てんかんは、はじめてのてんかんが
生後6か月から6歳で出ると言われていますが、
6か月未満や7歳以上ではじめての原因不明のてんかんを起こすこともあります。
いずれにせよ、治療はてんかんの薬を服用することになります。

2 構造的てんかん
脳の構造に変化が起き、てんかんが生じる場合、構造的てんかんと呼びます。
脳腫瘍、脳炎、脳梗塞、脳奇形、脳損傷などです。
構造的てんかんはMRI等で診断することができます。
治療は、手術や放射線、炎症止めなど、原因を治療しつつ、
てんかんの薬を併用することもあります。

3 反応性発作
原因が脳以外にあるとき、反応性発作と呼びます。
例として、低酸素、低血糖、低カルシウム血症、熱中症や
腎臓、肝臓が悪くててんかんがでることがあります。
この場合はてんかんの薬は使わずに、原因を治すことが優先されます。


そしてさらに覚えておいて頂きたいのが、 『群発発作』 と 『発作重積』 です。
群発発作とは、数日にわたり発作が繰り返しおこることをいいます。
発作重積とは、1回の発作が30分以上続く場合や、
1回の発作が終わりかけようとすると次の発作が始まってしまうことをいいます。
通常、1回のてんかん発作で死んでしまうことはありませんが、
群発発作や発作重積は残念ながら亡くなってしまうこともありますので、
この場合はすぐに動物病院を受診してください。

てんかんの薬を飲み始めるか、飲まないで経過をそのままみるかの
ガイドラインはいろいろあります。
例えば、半年に2回以上てんかん発作があれば、てんかんの薬を飲みはじめる、
群発発作や発作重積が1度でも起こった場合もてんかんの薬を飲み始める等
いろいろありますので、病院にて獣医師と相談してください。

てんかんの薬を開始しても、てんかんを完全になくすことを目標にはしていません。
てんかんを半年に1回以下にすることや、発作の持続時間、
重篤度を軽減することがてんかんの薬を服用する目標です。

てんかんの薬を服用する量を増やすときは、特に問題ないのですが、
(例えば、 朝1錠、夜1錠を朝2錠、夜2錠に増量 の場合は問題ないのですが、)
逆に、いきなりてんかんの薬を服用するのをやめると、てんかん発作をおこすことが
あるため(このことを離脱発作といいます)
時間をかけて少しずつてんかんの薬の量を減らしていきます。

基本的にてんかんの薬は一度服用し始めると、一生服用することになりますが、
てんかんの薬を服用し始めて2、3年間まったくてんかんがなければ、
半年ほどかけて少しずつてんかんの薬を減らして、薬をやめることができることも
(かなりまれですが)あります。

最後に、てんかんを起こした犬さん、猫さんの飼い主さんへお願いがあります。
てんかんの最中に声をかけても、なでてもてんかんには全く効果がありません。
クッションや座布団などをひいて、犬、猫の頭を守ってあげてください。

初めて犬、猫がてんかんを起こした場合、飼い主さんも動転されてしまいますが、
もし可能であれば、けいれんを起こしている状況をスマホで動画を
撮影していただけると、特に全体像や顔(よだれや目)を
撮影していただけると治療に役立ちます。(なかなか難しいのですが・・・)

(2023年11月21日)

第46話 てんかん

第45話 N-NOSE検査

第44話 犬の昆虫食

第43話 マダニ予防薬

第42話 リブレの補足

第21話〜第40話

第41話 ワクチン、打つ?

第 1話〜第20話